先日、FX をはじめたばかりの頃に自作した EA を再評価してみた んですが、その中で開発当時にどんなことを考えていたのか、何を参考にしていたのかが気になりました。
そこで、その頃に読んだ本を読みなおしてみることにしました。
システムトレード 基本と原則
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どんな本?
「トレードの世界は楽じゃないですよ。すぐに破産しますよ。だから生き残ることを一番に考えましょう。生き残ることができれば利益はついてきますよ。で、生き残るためにはこうするのがいいですよ」ということが書かれた本です。
メインとなるのは “生き残るためにはこうするのがいいですよ” の部分で、心構えや考え方の段階から実際のトレードまで著者の経験を交えながら6つの原則として説明しています。
あと、おまけで15名の「マーケットの魔術師」と呼ばれる人たちから、トレードで成功したい人たちへの一言アドバイスが付いています。
総評
FX に淡い幻想を持っている人にこそ読んでほしい本だけど、そういう人は「楽して儲かりますよ!」という感じのタイトルの本を読むか、ネットだけで済ませそうな気がする(偏見?)ので、FX で痛い思いをして甘くないことを知って「これまでとは違うやり方をしないといけないんじゃ?」と気づいたときに読んでほしい本です。
もちろん、淡い幻想を持っている/いないにかかわらず、初心者にはとても有益な本だと思います。
また、小難しい理論や数式が少なめなので、初心者でもトレードするまでの流れとか概要は理解しやすいのではないでしょうか。
ただし、仕掛けや手仕舞いの方法などはそれほど詳しく記載されていないので、そのあたりについては別の本が必要になるかと思います。
総じて経験の浅い人や、そこそこ経験はあるけど、あまり上手くいっていない人向けの本だと思います。
読み直してみた感想
・トレードをはじめる前 ~ 経験の浅い人が読むと変な幻想が減っていいかも
とりあえず「楽には勝てない」、「簡単に破産する」、「期待しすぎない」というようなことが前のほうに書かれているので、そこだけでも読んでおく価値があると思います。
専門的な知識がないと分からないこともあると思いますが、そういうところは「ふーん」ぐらいで流しておいて、経験や知識が増えてから読み直すといいと思います。
・ある程度トレードの経験を積んでから読むと、より理解したり実感したりできるかも
技術書とか専門書全般に言えることなんですが、経験や知識が増えてから読み直すと、前回読んだ時には「ふーん」ぐらいだったものが「そういうことか」と理解できたりします。
たとえば、僕の場合は「期待値が大切」とか「機会が少ないと期待値が高くても役に立たない」と言われても「ふーん」だったんですが、自分で EA を作ったり、EA販売サイトの EA を検証したあとで読み直してみると「そうなんだよね!」という感じで強く共感できました。
・一度に多くの資金管理方法を知ることができるのはありがたい
この本の中では7個の資金管理方法が紹介され、それぞれの特徴が比較されています。
パラメータを固定して比較しているので、それぞれの比較は少し物足りない気もしますが、著者の比較したいことや言いたかったことについてはこれで十分なのかもしれません。
それに、それぞれの方法の考え方や計算式も記述されているので、気になったのなら自分で試すこともできるし、むしろそうするべきなのでしょう。
・本のタイトル(邦題)と内容が合ってないかも
本のタイトルからすると「システムトレード “の” 基本と原則」が、あるいは「システムトレード “が” 基本と原則」と書かれているようにとれますが、そういうわけではないです。
たしかに著者は「ルールに従って行うトレード(=システムトレード)」をすすめてはいますが、システムトレードだけの原則を書いているわけでも、システムトレードが唯一の原則だと書いているわけでもありません。
いくつかある原則の中に「システムトレード」も含まれているだけです。
また、システムトレードは「ルールに従って行うトレード」という意味で、「裁量」か「自動売買」かを問いませんが、どちらかというと「自動売買」だと考える人が多いのではないでしょうか。(僕がそうでした)
そういうわけで、この本には EA などの自動売買アルゴリズムを作る際の原則とか、ロジック、テクニックなどが書かれているんじゃないかと期待したくなりますが、そういったものは書かれていません。
ちなみに、この本の原題は「The Universal Principles of Successful Trading」です。
直訳の「成功する取引の普遍的な原則」のほうが、著者が書きたかった内容をよくあらわしていると思います。
トレードシステムの法則
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どんな本?
トレードシステムを実際に作成しながら、実運用に耐えるシステムの作り方が解説されています。
解説には過剰最適化の防ぎ方や、仕掛けや手仕舞いの方法などが含まれます。
ただし、本書の中で作成されるのは株式と商品先物が対象のシステムなので、そのまま FX で使用できるものではありません。
なお、著者は「アベレイション」という有名?なトレードシステムを作った人とのことです。
総評
基本的に株式や商品先物の中の多数の銘柄を同時に扱うシステムを使って解説されているので、そのまま FX に適用できないことや、適用してもいいのかな?と疑問に思うことがあります。
ただ、それを差し引いても考え方や開発手順、アイデアなど、応用できることも多いと思います。
あとは、あくまでも “作り方” の解説なので、いずれにしても自分の EA を作成するときには検討、および検証が必要になります。
以上のことを考えると、少し経験を積んだ自動売買アルゴリズムの開発者向けの本だと思います。
読み直してみた感想
・カーブフィッティングを防ぐにはトレード数が多くないとダメというのは厳しい
この本の中では複数の銘柄をひとつのシステムで売買するので、中長期のトレンドフォローシステムでも十分なトレード数が確保できます。
でも、通常、EAは単一銘柄を売買することがほとんどなので…。
・BRAC(Build、Rebuild、And Compare)テストは試してみる価値がありそう
ヒストリカルデータの全てを使って開発したシステムと、同じ手順でヒストリカルデータの一部を使って開発したシステムの2つのシステムで、2つ目のシステムを開発するときに使わなかったヒストリカルデータの部分の成績を比較する方法です。
著者がアウトオブサンプルテスト(ヒストリカルデータの一部を使って開発したシステムを、残りのヒストリカルデータを使って実施するテスト)よりも過剰最適化を防ぐのに効果的だと言っています。
本当に効果があるのならやる価値はあると思います。
・ゲイン・ペイン・レシオは使えるかも
「平均年次利益 ÷ 平均年次最大ドローダウン」で求められる値です。
リスクリターン率(総利益 ÷ 最大ドローダウン)と似ていますが、リスクリターン率だと長い期間で1回だけ大きなドローダウンをくらったのか、頻繁に大きいドローダウンがあるのかが分かりません。
なので、併用するのがいいかと思います。
あと、はじめて EA を作ったときのメモに「g/pレシオ」とあったので、どうやら気にはしていたようですが、意味は理解できていなかったと思います。
・仕掛けや損切り、利食いに使うアイデアが参考になる
いくつかアイデアが紹介されていて、自分の EA を作るときに参考になります。
僕もいくつかは、この本の内容を元にして実装しました。
システマティックトレード
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どんな本?
簡単に言うと「仕掛けや手仕舞いのルールと、ひな形が要求する情報を用意すれば、資産に合わせた取引量が分かるシステムができますよ」という本です。
このシステムは、複数のルールや投資銘柄を組み合わせて作成することも可能です。
また、ルールの作り方や、過剰最適化の防止についても少なくない紙面を使って解説されています。
総評
ポートフォリオを組んだ際の各ルールへの資産の割り振りまでをシステマティックに実行しようというのが、とても興味深いです。
ただ、自分の理解が浅いだけかもしれませんが、“ひな形が要求する情報”を用意するのも、本書の内容をプログラムコードに落とすのも大変そうだなという印象です。
あとは、正しく実装できていることを確認しきれるのかどうか…。
まあ、ポートフォリオが巨大な場合には、それだけの労力をかける価値があるかもしれません。
というわけで、かなり大きめのポートフォリオを運用するつもりで、かつ、しっかり試験ができるプログラマー向けの本だと思います。
読み直してみた感想
・アイデアファーストっていうのは、その通りだと思うけど…
過去のデータから利益の出るルールを見つけ出すのではなく、まずは思いついたアイデアをルールにするのが先という考え方とのことですが、そのルールを過去のデータで最適化しすぎたら結局同じになるので、さじ加減が難しいと感じました。
・読む前にシャープレシオは勉強しておいたほうがいいかも
本書の中には「シャープレシオ」という指標がたくさん出てきます。
なので、たぶんシャープレシオのことを理解してから読んだほうが、本書の内容も理解できると思います。
ちなみに僕はシャープレシオのことをほとんど知らない状態で読んだので、肝心なところは理解できていないと思います。
・バリエーションというのは使えるかも
ひとつのルールの中に複数のバリエーション(たとえば短期トレンドをとらえるものと長期トレンドをとらえるものといった感じ)を持つというのは面白そうだと思いました。
・投資対象ごとに最適化しないって可能?
「特性があまり変わらない投資対象であれば、個別に最適化しないほうがいい」旨の記述がありますが、僕はやってしまっていました…。
でも、たとえば EURJPY と GBPJPY で同じパラメータにして上手くいくのかなぁ?
上手くいかないのはロジックが良くないとかなのかなぁ?
・ひな形(フレームワーク)の詳細は理解しきれず…
肝心のひな形の中身については、なんとなく分かったような分からないような感じです…。
シャープレシオのことを知っていれば、もう少しは理解できたのかもしれません。
・タイトルの副題と内容が合ってないかも
タイトルの副題に「独自のシステムを開発するための完全ガイド」とあるので、「自分」独自のシステムの開発の仕方が書いてあるのかと思ったんですが、実際には「著者」独自のシステムの解説(ガイド?)がメインでした。(前半3分の1くらいは「自分」と言ってもいいと思いますが)
ちなみに、原題は「A unique new method for designing trading and investing systems」です。
「unique system」じゃなくて「unique method」なんですよね。
直訳して「取引と投資のシステムを開発する独自の新しい方法」ぐらいにしておいてくれたら誤解しなかったのにと思います。
FX メタトレーダー4 MQLプログラミング
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どんな本?
MQL言語(EA を作成するためのプログラミング言語)やMetaEditor(EA の開発環境)についての説明から、売買ロジック、デバッグの方法まで、EA を作成するためのひと通りのことが解説されています。
なお、「こうすれば勝てるよ」みたいなことは書かれていません。
タイトル通りMQL言語を使用したプログラミングについての解説本です。
総評
全くプログラミングの経験がない人が、この本を読めば EA を作ることができるようになるかと言うと、ちょっと難しいのではないでしょうか。
この本に付属するサンプルコードを少しづつ変更することもできますが、作成した EA が正しく動作しているか確認するのが難しいと思います。
どちらかというと、ある程度何らかの言語でプログラミングができる人で、EA の作成経験が浅い人向けの本だと感じました。
読み直してみた感想
・注文失敗時のリトライ処理
自作の EA でリトライしてなかったことに今さら気づきました。
これだけでも読み直してよかった。